MB-System Version 5.0 Unix man page 訳

今井康貴
翻訳ver 1.0 20/OCT/2004



MB-System Unix Manual Page

mbsystem

セクション:MB-System 5.0
更新:2004年2月24日

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名前
mbsystem - 測深スワスデータ、信号強度(amplitude)、サイドスキャンデータ操作および処理のためのユーティリティプログラムのセット


バージョン
5.0


はじめに
MBシステムは、測深スワスデータ、信号強度およびサイドスキャンデータを操作、処理、リスト、表示するプログラムから構成されるパッケージである。このソフトウェアは、Unix プラットフォームのソースコードとして自由に、かつ無料で配布される。システムの中心は、MBIO と呼ばれる入出力ライブラリである。MBIO は、MB システムがサポートするスワスデータフォーマットであれば、各プログラムが透過的に働くことを可能にする。このアプローチはデータの種類に関わらず同じやり方で処理できる汎用ユーティリィティを可能にした。

ほとんどのプログラムはコマンドライン上のツールである。しかし、パッケージには、海底地形スワスデータの編集、船体位置の編集、海底地形計算モデル化、位置調節のためのGUIツールを含んでいる。頭文字 MB は MultiBeam を表す。これは、MBシステムの開発初期にはマルチビームソナーからの深海データの処理に注目したという事実を反映している。しかし、今やMBシステムは、サイドスキャンおよびインターフェロメトリソナーのデータフォーマットをサポートしており、深海だけでなく、あらゆる深度データで有効に働く。

全国科学基金(NSF)はMBシステム開発の主要な支持者だった。NSFは最初にラモント・ドハティー地球観測所(LDEO)にいた作者へ1993年から2年間、また1995年から5年間の資金援助をおこなった。
(略)
MBシステムのインストールには他のいくつかのパッケージソフト(例えばGMTとnetCDF)が必要である。それらすべては無料で自由に利用可能である。

作者
David W. Caress (caress@mbari.org) Monterey Bay Aquarium Research Institute
Dale N. Chayes (dale@ldeo.columbia.edu) Lamont-Doherty Earth Observatory

COPYRIGHT AND LICENSING
All Rights Reserved
All Wrongs Remembered
MBシステム・ソース・コードは、GNUプロジェクトによって公式化されるようなGNU一般ライセンスの下で配布される。
(略)

歴史
MBシステムの開発は、LDEO が SeaBeamマルチビームソナーで集めた、海底スワスデータ研究の一部として1990年に始まった。
(略)
バージョン5.0は新しい機能の組込みだけでなく、大幅に基本コードの書直しを行っている。


バージョン5の変更点
MBシステムのバージョン5.0は、バージョン4に対する多くの変更および改良を含んでいる。最も大きな変更は以下の通りである。

データ処理を制御する新アプローチ
1. 多数のツールによる処理結果を1つのファイルに出力
旧バージョンのMBシステムでは、処理プログラムが入力データファイルを読み、それぞれが出力データファイルを生成した。この一連の処理スキームは一般に多くの中間データファイルを生成することになった。MBシステム・バージョン5.0は編集および解析ツールの統合が特徴である。単一プログラム(mbprocess)が処理データを出力する。新しい並列処理スキームは海底地形の処理は可能であるが、サイドスキャンデータ処理までは実装されていない。旧バージョンのツールおよび仕様も並行して公開される。

2. 再帰的なデータリスト
グリッドやプロットに仕様されるデータファイルのリストは再帰的に用いられる。様々な航海データの管理を簡単にする。

3. 自動フォーマット識別
MB-System は拡張子に元づいてファイルを自動判別する。

4. 補助データファイル
スワス描画やグリッド化といった MBシステム共通処理の多くは補助データを使用することによってスピードアップが実行可能である。補助データには *.inf(ファイルの統計情報)、*.fbt および *.fnv(海底地形)がある。これらのファイルの各々は、オリジナルのスワスデータファイル名に示された4文字の拡張子を加えることにより指定される。
".inf"ファイルは mbinfo 出力をファイルにリダイレクトさせることにより作成される。
".fbt"ファイルは mbcopy を使用することにより作成される。フォーマット71ファイルへ海底地形データを展開する。
".fnv"ファイルは mblist を使用して作成される。位置テキストデータリストを作成する。
これらの補助ファイルは mbdatalist プログラムにより自動的に作成される。


バージョン5の新ツール
mbnavadjust
この新ツールは、スワスを重ね合わせる機能により、位置データ不良の海底地形データを調整する。それは、水中プラットフォームによる測深データを処理するのに特に役立つ。

mbprocess
この新ツールは様々な処理を行ない、単一の処理スワスデータファイルを出力する。mbprocess は、mbedit および mbclean による測深データ編集、mbnavedit による位置編集、 mbvelocitytool によるSVP変更、他の様々な修正を反映させる。

mbset
この新しいツールは、mbprocess 処理を制御するパラメタファイルの作成および修正を行う。

mbdatalist
この新しいツールは再帰的なデータリスト構造参照を可能にする。さらに、再帰的データ構造で参照されるデータファイル用に、補助データ ".inf"、".fbt"、".fnv" を作成する。

mbsvplist
この新しいツールは、スワスデータファイルに記録されたSVPをリストし、MBvelocitytool で読込み可能な音速ファイルを作成する。

mbareaclean
この新しいツールは、特定領域内の測深スワスデータの不良データにフラグを付与する。領域は矩形セルにグリッド化してまとめられ、これらセルによってグループ化される。データが読込まれるとそれぞれのセル内で統計調査が行われる。


投影座標系のサポート
MBシステムには、PROJ.4 Cartographic Projections library のソースコードが組み込まれており、一般に使用される全ての測地座標系をサポートする。PROJ.4 は Gerald Evenden (その後 USGS) によって開発されており、www.remotesensing.org ウェブサイトからダウンロード可能である。

多数の一般的な投影座標系は、MBシステムと一緒に配布されるファイル中で定義されている (mbsystem/share/projections.dat)。これらは標準UTM領域、全ての標準プレート座標系を含んでいる。また、ほとんどの欧州石油調査グループ(EPSG)の座標系も含む。

MBシステムは、サポートされる投影座標系の位置システムを使ったスワスデータの取扱いが可能になった。特に、MBシステム中では緯度経度の代わりに、UTM 東および北座標を使用した位置データファイルが描画あるいは処理可能になった。

mbgrid および mbmosaic は、mbsystem/share/projections.dat 中で定義されるどの投影座標系においてもグリッドあるいはモザイク図を出力可能である。

projections.dat 中で定義される測地座標系、UTM座標系、EPSG座標系データを使用して mmbgrid や mbmosaic のグリッド化を行っていれば、mbm_grdtiff および mbgrdtiff で生成される TIFF イメージは、完全に GeoTIFF 互換である。 これは、mbgrdtiff で作成された GeoTIFF イメージは、ESRI ArcGIS および他のGIS パッケージで使用される場合、正確にマッピングされることを意味する。

コードの再構築
全てのCコードは ANSI C 準拠である。 基本入出力ライブラリ(MBIO)が大幅に書き直された。 将来の開発を簡易化し、かつ既存コードのサポートを行うために、構造が合理化された。MBIO API が大きく修正された。

旧式の Simrad マルチビームデータの取り扱い
1997年以前の Simrad マルチビームソナーのデータは、各ソナーモデル個別のフォーマット id ではなく、単一のフォーマットid(51)としてサポートされる。 旧式のフォーマットidは自動的に51として認識される。したがって、既存のシェルスクリプトは引き続き動作する。

MBシステムはもはやフォーマット51データのビームフラグ付けをサポートしない。 フォーマット51データにおける mbedit および mbclean の使用はフラグ付きのビームデータを消去する。それはリカバリ不能である。 以前のバージョンのMBシステムは測深値の一番高いビットをビームのフラグに使用していた。なぜなら、Simrad データはこのビットを使用していなかったためである。旧式のフラグ付けスキームが邪魔をしているため、全てのビットレンジを使用した測深記録を行うことができない。

旧式の Simrad データは拡張フォーマットであるフォーマット(57) へ移行することを強く推奨する。フォーマット57は適切なビームフラグを含み、MBシステムの全ての処理をサポートする。 フォーマット57は現行のSimrad マルチビームデータの処理にも使用される。

旧式のSimrad マルチビームのサイドスキャンデータ(1997年以前)は、EM3000, EM3000, EM120 といった現行ソナーによるデータと同様に扱われる。 ベンダフォーマット生データ中のサンプル値はまとめて平均され、補間されて1024ピクセルのサイドスキャン幅のデータになる。 このまとまったサイドスキャンデータはベンダフォーマット中には保存されない。そこで、データは拡張フォーマット(57)に変換しておくことを推奨する。フォーマット57は測深値のフラグや補間サイドスキャンデータを保存可能である。

MBシステムのデフォルトパラメタの合理化
バージョン5.0以前のMBシステムでは、mbdefaults によってデフォルト値が設定された。それはフォーマットid、ピン平均の制御、領域切出しのための緯度経度設定、探査開始および終了時間などである。 これらの値はもはや .mbio_defaults ファイルで設定される、もしくは mbdefaults で制御される。 上記のように、ファイル名から自動的にフォーマットid が認識される場合もある。

ファイルと認識された構造が一致しない場合、使用プログラム実行時に -Fformat オプションをつけてフォーマットを指定する必要がある。 ピン平均およびデータ切り出し(領域および時間)の制御はあまり使用されない。コマンドライン引数で明示的に指定する必要がある。

新データフォーマット
Furuno HS10マルチビーム測深データはフォーマット171としてサポートされる。

SeaBeam 2120マルチビームのL3 Communications XSE ファイルはフォーマット94としてサポートされる(Elac Bottomchart MkII XSE データをサポートするため使用された)。

R/Vユーイング搭載のHydrosweep DS2マルチビームデータにより生成されるSTN Atlas マルチビーム生データは読み出し専用フォーマット(182)でサポートされる。処理は読み書き可能な拡大フォーマット(183)でサポートされる。

IFREMER netCDF マルチビーム保存データはフォーマット75でサポートされる。 同様にIFREMER netCDF 位置保存データはフォーマット167でサポートされる。

STN Atlas processing data format SURF はフォーマット181でサポートされる。

現在SURFは読み出し専用フォーマットとしてサポートされる。 これはSURFデータの描画およびグリッド化は可能であるが、データ変更は不可能であることを意味する。 SURF形式データの変更を実行するための書込みや変換は以降のバージョンでサポートされる。

ハワイ Mapping Research Group のMR1フォーマットはフォーマット64でサポートされる。 このフォーマットは、HMRGインターフェロメトリックソナーやWHOI DSL120 深海曳航インターフェロメトリックソナーのデータを普及させるために使用される。 このフォーマットは、MBシステム MBIO ライブラリ中の HMRG ライブラリ(libmr1pr) でサポートされる(ソースコード付き)。 コードをGPLの下で利用させてくれたRoger Davis および HMRG に感謝。


バージョン5データ処理構造
旧バージョンのMBシステムは連続して作動する処理ユーティリィティが特徴である。すなわち、スワスデータファイルを読み、それを修正し、次に、別のスワスデータファイルを出力する。 連続処理ユーティリィティは処理の柔軟性を重点的に考えている。というのは、必要なプログラムだけを実行るだけの場合があるためである。また、一般にはプログラムが実行される順番が問題であるためである。

しかしながら、連続処理を行うと、データ処理は中間データファイルが頻繁に、かつ大量に発生する。 例えば、EM300データファイル「mbari_1998_524.mb57」の測深データにスパイクおよび位置飛びがあり、正しくない音速で計算されている場合、MBシステムのユーザは以前は以下の手順で処理する事になるだろう。

1) mbclean を実行して明らかなエラーに自動的にフラグを付ける。
入力: mbari_1998_524.mb57
出力: mbari_1998_524_c.mb57

2) mbedit を実行して対話式に測深データにフラグ付ける。
入力: mbari_1998_524_c.mb57
出力: mbari_1998_524_ce.mb57

3) mbnavedit を実行して対話式に位置データを修正する
入力: mbari_1998_524_ce.mb57
出力: mbari_1998_524_cen.mb57

4) mbvelocitytool を実行して、測深データ再計算のために適切な音速プロファイル(SVP)を作成する。
入力: mbari_1998_524_cen.mb57
出力: good.svp

5) mbbath を実行して測深データを再計算する。mbvelocitytool を使用して生成されたSVPファイルを使用する。
入力: mbari_1998_524_cen.mb57
入力: good.svp
出力: mbari_1998_524_cenb.mb57

6) mbsimradmakess を実行してサイドスキャンデータを再計算する。不良データとしてフラグが立てられたビームのサイドスキャンデータを除去する。
入力: mbari_1998_524_cenb.mb57
出力: mbari_1998_524_cenbs.mb57

7) mbbackangle を実行してサイドスキャンデータを修正するための信号強度対角度テーブルを計算する。
入力: mbari_1998_524_cenbs.mb57
出力: ampvsga.dat

8) mbanglecorrect を実行してサイドスキャンデータを修正する。
入力: mbari_1998_524_cenbs.mb57
入力: ampvsga.dat
出力: mbari_1998_524_cenbsc.mb57

この処理の結果は入力スワスデータファイル、最終のスワスデータファイルおよび5つの中間スワスデータファイルを含んでいる。

このアプローチがデータ保存領域に与える影響は明白である(無用のデータファイルを自動的に削除するスクリプトを作動させる、あるいは、中間のファイルを作らないようにするため、あるプロセスから次のプロセスをパイプすることによりより問題を改善した者もいる)。

連続処理アプローチはさらなるデータ管理の問題を示す。というのは単一サーベイであっても、しばしばデータファイルは異なる処理必要条件を持つためである。 我々は少数のデータファイルだけ位置編集や測深データ再計算が必要な場合や、いくつかのデータファイルだけに測深データおよび位置編集の複数のシナリオが必要な場合には、非常に多数のデータセットを使っての処理は厄介であることを知った。

MBシステムのバージョン5は、ほとんどのスワスデータ処理を単純化する並行処理スキームを実装した新しいユーティリィティを含んでいる。 このスキームはプログラム mbprocess に集約されている。それは、単一ステップ中で次の処理タスクを実行可能である。
  1. mbnavedit によって生成された修正された位置を結合する。
  2. mbedit と mbclean からの測深データの編集フラグを適用する。
  3. mbvelocitytool または mbsvplist からの音速モデルを用いたレイトレース計算により、時間および角度データから測深データを再計算する。
  4. ロールバイアス、ピッチバイアス、方位バイアス、喫水に変更を適用する。
  5. 後方散乱からサイドスキャンデータを再計算する(Simrad マルチビームのみ)。
  6. 振幅対角度パターンを用いてサイドスキャンデータを修正する。
  7. 測深データに潮汐を適用する。
mbprocess 処理はテキストパラメータファイルによってコントロールされる。 それぞれの mbprocess パラメタファイルは、それぞれの入力データファイルに".par"拡張子を加えて名前を付けられる。パラメタファイルは処理モードおよびパラメタをセットする単一行のコマンドを含んでいる、

mbedit、mbnavedit、mbclean のようなツールはパラメタファイルを生成もしくは修正する。加えて mbprocess によって使用されるファイルを生成する。 mbset も mbprocess パラメタファイルを作成および修正のために使用することができる。
連続処理スキームとして上に記述されたのと同じ処理は、新しい並行処理スキームでは以下のようになる。

1) mbdatalist を実行して補助データを作成する。統計データ".inf"、測深概要".fbt"、位置概要".fnv" である。 これらのファイルはスワス描画やグリッド化といった共通処理のスピードアップに使用される。
入力
mbari_1998_524.mb57
出力
mbari_1998_524.mb57.inf
mbari_1998_524.mb57.fbt
mbari_1998_524.mb57.fnv

2) mbclean を実行して明らかな外れ値にフラグを付ける。またイベントリストを作成する。 パラメタファイル ".par" が作成される。測深データのフラグが ".esf" ファイルに書き出される。
入力
mbari_1998_524.mb57
出力
mbari_1998_524.mb57.esf
mbari_1998_524.mb57.par

3) mbedit を実行して対話式に測深データを修正し、修正事項をファイルに出力する。 mbclean による既存の編集は mbedit 編集に先立ってロードされ適用される。 パラメタファイルが更新され、測深データのフラグが ".esf" ファイルに書き出される。
入力
mbari_1998_524.mb57
mbari_1998_524.mb57.esf
mbari_1998_524.mb57.par
出力
mbari_1998_524.mb57.esf
mbari_1998_524.mb57.par

4) mbnavedit を実行して対話式に位置データを修正する。編集された位置は、".nve" ファイルに出力される。パラメタファイルが更新され、".nve" に位置が追加される。
入力
mbari_1998_524.mb57
mbari_1998_524.mb57.par
出力
mbari_1998_524.mb57.nve
mbari_1998_524.mb57.par

5) mbvelocitytool を実行し、測深データを再計算するために適切な音速プロファイル(SVP)を生成する。SVP は ".svp" ファイルに出力される。 パラメタファイルが更新され、".svp" に記録したSVPモデルを使ったレイトレーシングによる測深再計算が可能になる。
入力
mbari_1998_524.mb57
mbari_1998_524.mb57.par
出力
mbari_1998_524.mb57.svp
mbari_1998_524.mb57.par

6) mbbackangle を実行し、振幅対角度テーブルをデータ中の規則的な間隔で生成する。 これらのテーブルは".sga" ファイルに出力される。パラメタファイルが更新され、ピンごとの振幅対角度テーブル補間によるサイドスキャンデータ修正が可能になる。
入力
mbari_1998_524.mb57
mbari_1998_524.mb57.par
出力
mbari_1998_524.mb57.sga
mbari_1998_524.mb57.par

7) mbset を実行し、mbprosess がサイドスキャンデータを再計算する際のパラメタファイルを作成する(Simrad社製マルチビームのみ)。不良データとフラグ付けされたサイドスキャンデータを削除する。
入力: mbari_1998_524.mb57.par
出力: mbari_1998_524.mb57.par

8) mbprocess を実行し、測深データ修正結果の適用、位置データの結合、測深データの再計算、サイドスキャンデータの再計算、サイドスキャンデータの修正を行う。
処理されたスワスデータはスワスデータファイルに出力される。 統計、測深概要、位置概要の補助データが生成される。
入力
mbari_1998_524.mb57
mbari_1998_524.mb57.esf
mbari_1998_524.mb57.nve
mbari_1998_524.mb57.svp
mbari_1998_524.mb57.aga
mbari_1998_524.mb57.par
出力
mbari_1998_524p.mb57
mbari_1998_524p.mb57.inf
mbari_1998_524p.mb57.fbt
mbari_1998_524p.mb57.fnv

この処理の結果は単一の出力スワスデータファイルである。 さらに、測深データに追加の修正が必要な場合、処理された出力データは容易にそれを反映させて更新することが可能である。 mbedit プログラムが再実行されると、".esf" ファイルから既存の編集をロードし、"esf" ファイルを更新する。 最新の修正を反映させるには、mbprocess を再実行すればよい。 同様に、測深データ編集や位置修正に影響を与えることなく SVP ファイルを変更することが可能である。

古いバージョンである連続処理ユーティリィティも、依然MBシステムで配布される。 しかしながら、連続処理ツールのうちのいくつかは、同じ名前の新バージョンと取り替えられた(例えばmbedit、mbclean、mbbackangleおよびmbnavedit)。 これらの場合、古いバージョンはプログラム名に "old" を付けて保存されている(例えばmbeditold、mbcleanold、mbbackangleoldおよびmbnaveditold)。


新バージョン5データリスト
MBシステムの旧バージョンは、いくつかのプログラムの入力としてデータファイルのリストあるいはデータリストを使用する(例えばmbgrid、mbmosaic、mbinfo、mblistおよびmbm_plot)。 基本的に、データリストのエントリはスワスデータファイル名(フルパスで書く場合も多い)の後にMBシステムフォーマットIDを書く。 '#'で始まる行はコメントと解釈される。 バージョン5は、いくつかの方法でデータリストの定義および使用法を拡張する。

第一に、データリストは再帰的になった。 データリストのエントリは別のデータリストファイルに記載されている場合がある。その場合データフォーマットid を -1 で表示する。

第二に、データリストエントリには、3番目のカラムに mbgird 時のウェイト値が記載可能になった。 この3カラム目の値は他のデータより高いデータに重みを加えるために使用されてもよい。 たとえば、SeaBeam 2112データに1.0の重みを与え、過去のSeaBeam classic データには 0.001 を与えることが可能である。
その結果、両者のデータが重なる場合、古いデータより新しい2112データに重みがおかれる。

データリストの3番目の新機能は、新しい並行処理スキームを使用して処理されたデータで働く。 並行処理スキームでは、ロウデータファイルに mbprocess によって処理されたファイルが付随する。 直接最良のデータファイルを参照するデータリストを維持することは厄介である。 ロウファイルを含むデータリストの最初の行に$PROCESSEDを挿入すると、もし処理ファイルが存在すれば、mbgrid のようなプログラムは処理ファイルを読み込む。そうでなければロウファイルを読み込むだろう。 同様に、最初の行に $RAW があれば、データリスト中で直接参照されるロウファイルを読み込む。 これらのオプションは再帰的に働く。

$PROCESSED もしくは $RAW の実行は、再帰的なデータリスト階層を通じて、すべての他のオプションに優先される。 グリッド化のウェイト値も再帰的に適用される。したがって、データリストのエントリに値を適用することにより、多数のデータファイルのグリッド化ウェイトを指定することができる。 デフォルトでは、グリッド化ウェイトは最終的にファイルエントリ自体に記載された値で上書きされる(これはデータリストタグ $NOLOCALWEIGHT で逆にすることができる)。


バージョン5ファイル命名規則
MBシステムバージョン5 は標準化されたファイル拡張子を使用する。 これらの拡張子は、それがどのような種類のファイルと関係しているかをMBシステムに教える。また、ユーザーが特に明示しなくても、ファイルがどのデータフォーマットであるかを示す。 このファイル命名規則を使用しなくても処理は可能であるが、命名規則に従えば処理がはるかに容易になることを保証する。 変換はファイル名の最後に".mbXX" や ".mbXXX" を付けることである。ここで XX または XXX はmbシステムのフォーマットIDである。

例えば、Simrad EM3000 フォーマット57 のファイルは以下のように命名される。

0053_20020518_205816.mb57

また、Reson 8101 GSFフォーマット121 ファイルは以下のように命名される。

039_2106.mb121

MBシステムは、ソナー製造会社やデータ処理パッケージ会社によって使用される多くの標準ファイル名をそのまま認識可能である。 例えば"_raw.all" 拡張子をもつ以下のようなファイル

0053_20020518_205816_raw.all

は Simrad 社製マルチビームデータの古いフォーマット(51)もしくは新しいフォーマット(56)のいずれかであると判別される。また、プログラムは、さらに2つのフォーマットのどれが当てはまるかを決定する。 ".rec" で終わる名前をもつファイルは SeaBeam 2100 マルチビームデータと認識される。 ".xse" で終わる名前のファイルは Elac Bottomchart もしくは SeaBeam 2100 マルチビームの XSE94 フォーマットのデータである。 これらの例にあるようなデータを用いて処理が行われファイルが出力される場合、mbprocess プログラムはmbシステム命名規則により自動的に名前を置換する。


MBシステムのプログラムおよびマクロ
それぞれのプログラムやマクロの詳細情報に関して個々のマニュアルページを参照すること。入出力ライブラリ、MBIOがサポートするデータフォーマットに関する情報は MBIO マニュアルページを参照すること。 以下は、バージョン5並行処理スキームで使用されるMBシステムのプログラムである。連続処理スキームに関連したプログラムには*印が付与される。

mbbackangle
規則的なデータ間隔で、海底のグレージング角の関数として平均振幅またはサイドスキャンデータのテーブルを生成する。

mbclean
測深データ中の悪いビームを識別し自動的にフラグ付けを行う。

mbcontour*
GMT互換性をもつカラー等高線データ(ポストスクリプトファイル)を生成する。

mbcopy*
スワスデータファイルをコピーする。

mbdatalist
再帰的なデータリストファイルを解析し、データファイル、フォーマットおよびウェイトの完全なリストを出力する。

mbdefaults*
測深データの読み書きを行うために mbio パラメタを設定またはデフォルト値を表示する
mbedit
測深データの不良ビームにフラグ付けを行う対話型エディタ。

mbformat*
MBIO ライブラリでサポートされるデータフォーマット情報を表示する。

mbgetesf*
測深データ編集情報ファイル".esf"中のフラグ情報を展開表示する。フラグ情報は mbedit、mbclean および mbprocess によって使用される。

mbgrid*
測深データ、信号強度(振幅)、サイドスキャンデータをグリッド化する。

mbhistogram*
測深データ、信号強度(振幅)、サイドスキャンデータのヒストグラムを作成する。

mbinfo*
測深データファイルの基本統計情報を出力する。

mblevitus*
1度ごとの音速プロファイル年平均値を作成する。

mblist*
データファイルのリストを作成する。

mbmosaic*
サイドスキャンおよび振幅データのモザイク図を作成する。

mbnavadjust
対話型の位置調整パッケージ。スワス測深データが重なるもしくは交わるところで合致するように位置を調整する

mbnavedit
対話型エディタ。測深データファイル中の位置に関する問題に使用する。

mbnavlist*
測深データファイル中の位置データを表示。

mbprocess
1ステップで、様々な処理を行う。航跡の結合、測深データの編集、水深再計算、サイドスキャンデータの再計算が可能。

mbps*
ポストスクリプト形式の測深データの表示。

mbset
mbprocess 用パラメタファイルの作成および変更。

mbsvplist*
測深データファイル中の音速プロファイルの表示。

mbswath*
GMT互換性をもつカラー測深データの作成(ポストスクリプト形式)。

mbvelocitytool*
測深計算における音速プロファイル影響をモデル化する対話型プログラム。


以下は、バージョン5の並行処理スキームで使用されないプログラムである。 これらのプログラムは、連続処理スキームおよび旧バージョン処理との互換性のため配布物に含まれる。

hsdump
Hydrosweep DSデータ中のデータレコード内容を出力する。

mbanglecorrect
振幅またはサイドスキャンデータにグレージング角修正を適用する。

mbbackangle
海底グレージング角の関数として平均振幅やサイドスキャンデータ値のテーブルを作成する。

mbbath
測深データ中の時間から深度を生成する。

mbcleanold
スワス測深データ中の不良ビームを識別し自動的にフラグを立てるツール。

mbcut
測深データの指定領域を削除する。

mbeditold
旧対話型エディタ。測深データ中の不良ビームにフラグを付ける。

mbfilter
サイドスキャンデータ、ビーム振幅、測深データにいくつかの単純なフィルタを適用する。

mbgetmask
測深データからフラグ情報を抽出する。

mbmask
mbgetmask からの情報を適用する。

mbmerge
新しい位置での測深データを結合する。

mbnaveditold
旧対話型のエディタ。測深データファイル中における位置問題を解決する。

mbrollbias
ソナーシステムのロールバイアスを評価する。同一測線を方向を変えて収録した2つのデータを使用する。

mbsimradmakess
Simrad EM300 および EM3000 データに含まれる振幅からのサイドスキャン画像を生成する。

mbtide
測深データのを潮汐影響を修正する。

mbunclean
測深データの編集フラグを消去する。


以下は現バージョンのMBシステムのマクロである。 マクロとは、MBシステムおよび他のパッケージソフトに共通の処理を容易に遂行するためのプログラムあるいはシェルスクリプトである。

mbmfmtvel
Hydrosweep DSデータファイルをスキャンし、データ処理に使用される平均流速および表層流速のテーブルを出力する。

mbm_dslnavfix
UTM北航および東航データを含む WHOI DSL AMS-120 航跡ファイルを読み込み、mbmarge用の緯度経度データを作成する。

mbm_grd2geovrml
TerraVision tileset および GeoVRML ファイルを生成する実行コマンドを作成する。 他データと結合しWEBブラウザで見られるようになる。

mbm_grdplot
GMT GRDグリッドファイルを読込み、GMTマップを生成するシェルスクリプトを出力する。

mbm_grd3dplot
GMT GRDグリッドファイルを読込み、GMT 3D図を生成するシェルスクリプトを出力する。

mbm_plot
測深データを読み込み、測深図および等高線を描画するシェルスクリプトを出力する。

mbm_rollerror
測深データを読み込み、ソナーに使用される鉛直参照における雑音を計算する。またデータに適用されるロール修正値を生成する。

mbm_stat
mbinfo をスワスデータファイルに対して実行し、その出力からビーム統計を抽出する。

mbm_utm
アスキーデータの順または逆UTM投影を行う。

mbm_vrefcheck
ハイパスフィルタされた海底地形を描画する

mbm_xbt
Sparton XBTのデータを処理し、音速プロファイル用を出力する

mbm_xyplot
"X-Y"のアスキーファイルを読み込み、測深データ上にXY値を表示するスクリプトを作成する。



処理アプローチの例
ここでは、新しい並行処理スキームを使用した測深データ処理が示される。行終端での"\"文字は、コマンドが次の行に続くことを示す。コマンド引数および機能の詳細情報については個々のマニュアルを参照のこと。

SEABEAM 2100データの処理
以下のデータ処理は、SeaBeam 2100 マルチビームソナーで得られたデータに推薦される。 SeaBeam 2112ソナーは、現在 R/Vノール (ウッズホール海洋研究所)、R/V ロナルド ブラウン(NOAA) で使用されている。 少しの違いはあるものの、同じアプローチは、他のすべてのマルチビームソナーのデータ処理に適用できる。 他のソナーデータの問題と違いは、次節で議論される。

1時間分のSeaBeam 2112 データファイル "sb199411211212.mb41"(フォーマット41)を考える。 このファイルは測深データ、ビーム振幅およびサイドスキャンデータを含んでいる。 データの処理および予備地図の生成に以下のコマンドが実行される。

1. データファイルには何が入っているか?
最初にデータファイルの中身に関する統計を求めるため mbinfo を実行する。

mbinfo -I sb199411211212.mb41

出力を見ることで、我々がどのようなデータを処理しているか分かる。

2. 補助ファイルの生成。
次に mbdatalist を実行し、統計情報(".inf")、測深概要(".fbt")、航跡概要(".fnv")を作成する。これらは多数の処理をスピードアップする。

mbdatalist -I sb199411211212.mb41 -N -V

本プログラムを実行すると3つの出力ファイルが生成される。これらを補助ファイルと呼ぶ。
sb199411211212.mb41.inf
sb199411211212.mb41.fbt
sb199411211212.mb41.fnv

3. チェック用の絵を作成する
この段階でデータを処理する準備ができた。 しかし、最初に水深等高線および航跡を乗せたカラー地形図を使って視覚的にデータをチェックする。 これは、mbm_plot で容易に作成される。

mbm_plot -I sb199411211212.mb41 -G1 -C -N -V -O ZSwathBathCont

ZSwathBathCont.cmd

また、本ファイル複数のファイルはこの名とは異なる拡張子を加えることにより構築された名で生成されるだろう。 ここで ZSwathBathCont は図名を表す。以後、この名前に違った拡張子を追加した複数のファイルが生成される。
mbm_plotコマンドは、シェルスクリプト ZSwathBathCont.cmd を生成する。 このシェルスクリプトを実行すると、ポストスクリプトファイル ZSwathBathCont.ps を生成する。mbdefault で定義したビューワを使用して描画結果が画面に表示される。 ZSwathBathCont という名前は任意である。 ユーザが希望する名前を指定可能である。

mbm_plot によって生成される図には以下のものがある。
- 海底地形図および等高線(カラー)
- 海底地形図(カラーシェーディング)
- 地形図および反射振幅(カラー)
- グレイスケール振幅
- サイドスキャンデータ(モノクロ)

既に最初のタイプの図を生成した。 同様に他の4つを生成する

mbm_plot -I sb199411211212.mb41 -G2 -N -V -O ZSwathBathShade
ZSwathBathShade.cmd

mbm_plot -I sb199411211212.mb41 -G3 -S0/1 -N -V -O ZSwathBathAmp
ZSwathBathAmp.cmd

mbm_plot -I sb199411211212.mb41 -G4 -S -N -V -O ZSwathAmp
ZSwathAmp.cmd

mbm_plot -I sb199411211212.mb41 -G5 -S -N -V -O ZSwathSS
ZSwathSS.cmd

ヒストグラムを平等化する -S オプションをサイドスキャンおよび振幅データに使用する。 振幅を重ねて描画した場合、-S0/1 オプションを使用した。シェーディングに使用される振幅データにヒストグラム平滑化を行い、海底地形データには平滑化を行わないためである。


3. 解析ツールの適用
データ品質については合理的なアイデアがある。 問題を解決するため、幾つかのデータ分析および編集ツールがある。より詳細にデータを調査するためにも使用される。 これらは、いつでも任意の順番で実行可能である。

分析オプションA:自動的な測深データ編集。
mbclean は単純な測深不良検知アルゴリズムであり、地形データを自動的に編集する。 しかし、ユーザーは対話的に編集することを勧める(下記オプションB参照)。というのは、我々の考えでは、興味ある海底地形および地形変化とそうでないものを見分ける人間の目と脳に相当するフィルタは依然未完成だからである。 特に、mbclean のどのフィルタも満足できる結果からは遠い。 多くのユーザが mbclean で編集前に前処理を行うことが有用と考えている。多数もしくはほとんどの不良データに自動的にフラグが付くように願っている。 しかし、我々は再度自動フィルタのみに依存しないことの重要性を強調する。 データが気になる場合は、それを見ること。

mbclean を適用する場合、我々通常以下のフィルタを使用する。 ローカルのメジアン水深から、その数分の1の範囲を逸脱したデータにはすべてフラグを付けている(-G オプション)。 フィルタ(複数可)および使用されるフィルタのパラメタ選択は、処理される測深データの性質に大きく依存する。

mbclean -I sb199411211212.mb41 -G0.9/1.1 -V

編集保存ファイル sb199411211212.mb41.esf が既に存在する場合、mbclean はそのファイルを読み込み、フィルタリング前に先在する編集結果を適用する。 先在するすべての編集および mbclean による新規フラグ付けは編集保存ファイルに出力される。つまり sb199411211212.mb41.esf が再度呼ばれる。

これがデータファイル上で実行される第一の分析プログラムである。さらに mbclean は mbprosess で使用されるパラメタファイル(sb199411211212.mb41.par)を作成する。 このファイルは mbprocess がデータ処理を行う際に使用されるパラメタおよび設定が記載されている。 もしパラメタファイルが既に存在すれば、mbprocess 実行の際に測深データ編集が先に適用されるように、mbclean はパラメタファイルを変更する。


分析オプションB:対話型の測深データ編集。
我々は、水深測量術の質をチェックし、かつ必要なときに人工品にフラグを立てるために対話型のグラフィカルなツールmbeditを使用する。 対話式のグラフィカルツール mbedit を使用して測深データの品質をチェックし、必要に応じて不良データにフラグを付ける。 mbedit は次のコマンドで開始可能である。

mbedit

その後、メニューからデータファイルを開く。 あるいは、コマンドライン上でスワスファイルを指定可能である。

mbedit -I sb199411211212.mb41

測深データを編集している間、全ての編集イベントは「編集保存ファイル」sb199411211212.mb41.esf に出力される。 このファイルは <Done> もしくは <Quit> がクリックされると閉じられる。 mbclean および mbprocess が実行された場合や再度 mbedit が実行される場合、この編集イベントファイルが読まれ、イベント内容が適用される。 mbedit がデータファイルに適用した最初の分析である場合、mbedit は mbprocess パラメタファイル"sb199411211212.mb41.par" を生成する。これは mbprocess が測深データを処理する際に使用する全てのパラメタおよび設定を含んでいる。 もしパラメタファイルが既に存在すれば、mbprocess 実行時に測深データ編集が先に適用されるように、mbedit パラメタファイルを修正する。



分析オプションC:位置の編集
対話型グラフィカルツール mbnavedit を使用して位置品質をチェックし、必要に応じて問題を解決する。 mbnaveditを開始する。

mbnavedit

その後メニューから測深データファイルを開く。 あるいは、コマンドラインから測深データファイルを指定可能である。

mbnavedit -I sb199411211212.mb41

位置編集が終了したら場合、<Done>あるいは<Quit>ボタンをクリックする。 プログラムは、最終的な位置データを「修正位置」sb199411211212.mb41.nve ファイルに出力する。 mbnavedit も mbprocess パラメタファイルを更新または必要に応じて作成する。mbprocess が実行される場合に 修正位置が読み込まれスワスデータと結合されるように設定する。


分析オプションD:音速断面モデリング
我々は、スワスデータに格納された生の移動時間および角度からの水深測量術を計算するために使用される音速プロフィール(SVP)を変更する結果をモデル化するために対話型のグラフ式のツール mbvelocitytool を使用する。

対話型グラフィカルツール mbvelocitytool を使用して代替音速断面(SVP)の影響をモデル化する。SVPは測深データに保存された伝達時間および入射角から深度を再計算する場合に使用される。 mbvelocitytool で開始可能である。

mbvelocitytool

その後、メニューからスワスファイルを開く。 あるいは、コマンドライン上でスワスファイルを指定可能である。

mbvelocitytool -I sb199411211212.mb41

Levitus データベースがインストールされていれば、mbvelocitytool は mblevitus 実行を試みるだろう。スワスデータファイルの位置から参考となる音速断面を抽出する。 このSVPは、モデリングに使用された編集可能なSVPと共に表示される。 詳細に関しては、mbvelocitytool マニュアルを参照のこと。 測深データが正しくないSVPを使用した計算による不良を含んでいる場合、もしくはより正しいと思われるSVPモデルを使用して計算する場合、SVPを<File->Save swath svp file> メニューから保存する。

その後、mbvelocitytool は修正されたSVPを sb199411211212.mb41.svp に保存する。また、パラメタファイル sb199411211212.mb41.par を更新(または必要に応じて作成)し、mbprocess がこの新しい SVP で測深計算を行うようにセットする。


分析オプションE:サイドスキャンデータの修正
サイドスキャン画像がスワスを横切るシステマティックな振幅変化に支配される場合がある。 一般に、スワスの中央あるいはナディア(天底)領域は振幅が高く、それ以外の外側の領域は振幅がはるかに低い。 グレージング角による振幅変化を表す適切なモデルがあれば、mbprocess によりこの効果は修正可能である。 グレージング角対振幅の関数は海底のタイプによって変化するため、データファイル中、一定間隔で分離された振幅とグレージング角の修正テーブルを構築する必要がある。 mbbackangle を使用して振幅対グレージング角のテーブルを作成する。

mbbackangle -I sb199411211212.mb41 -P25 -N161/80 -V

ここでは、新規テーブルは25ピンごとに構築される。テーブルはマイナス80度からプラス80度まで1度ごとに構成される。 mbbackangle はテーブルを、振幅対グレージング角のファイル sb199411211212.mb41.sga に出力する。 mbbackangle は mbprocess がサイドスキャンデータを修正するように パラメタファイルsb199411211212.mb41.par を更新する。


ステップ4:データ処理
mbprocess は入力およびスワスデータを取込み、処理スワスデータを作成する。 パラメタファイル sb199411211212.mb41.par に記載された内容が処理に反映される。

mbprocess -I sb199411211212.mb41

を実行してデータを処理する。 実行後、処理ファイル b199411211212p.mb41 が作成される。また、自動的に3つの補助ファイルが作成される。
sb199411211212.mb41.inf
sb199411211212.mb41.fbt
sb199411211212.mb41.fnv


ステップ5:測深データのグリッド化
mbgrid を使用して測深データのグリッド化を行う。 ファイル中の最大深度は4502m である。これは mbinfo 出力から分かる。 120度スワスで探査しているため、スワス幅は15.3km であり(=4502*tan60*2)、水深の3.4倍に相当する。 これは、航跡直交方向の平均サンプリング間隔は 15300m/120=127.5m であることを意味する。

各グリッドセルに1つ以上のデータポイントがある場合、「オーバーサンプル」と定義する。 セル中にデータポイントが無い場合、「アンダーサンプル」と定義する。 いま 150m のグリッド間隔を選択する。スワス中央に向かってはオーバーサンプリングであるが、スワス端に向かってはアンダーサンプリングとなる。

mbgrid は入力引数としてデータリストをとる。はじめにデータリストファイルを作成する。

echo sb199411211212p.mb41 41 > datalist_grid

mbgrid を実行する。以下のオプションを使用する。
・ガウス平均アルゴリズム(-F1)
・緯度経度のグリッド間隔150m (E150/150/m)
・測深データをグリッド化 (-A1)

スプライン補間を使用して2グリッドより小さいギャップを埋める。GMTとの互換性をとるためにデータの無い領域は"Nan"で埋める。 さらに -M オプションを指定して、データ密度およびデータ標準偏差のグリッドを生成する。

mbgrid -Idatalist_grid -E150/150/m \
-R114.2208/114.4209/-31.9001/-31.6377 \
-OZGridBath -A1 -N -C2 -M -V

mbgrid は、等高線および海底地形グリッドがのったカラー海底地形図を生成するシェルスクリプトを作成する。

出力されたシェルスクリプトを実行する。

ZGridBath.cmd

データ密度および標準偏差グリッドのプロットを生成するシェルスクリプトも作成される。

ZGridBath_bath_num.cmd
ZGridBath_bath_sd.cmd



ステップ6:修正サイドスキャンデータのモザイク画像作成
mbmosaic は mbgrid と似た働きをするが、サイドスキャンデータ処理に有用なモザイク図で使用されるスワス部を優先することに特化されている。 特に、スワスナディア(中央)領域を使用しないモザイク図の作成が可能である。またあるアジマス角に対するモザイク図の作成が可能である。 サイドスキャンデータは測深データより高解像度であるため、より細かいグリッドが適用可能である。 しかし、海底地形にサイドスキャンデータを重ねたいため、測深データに等しい150mグリッドを適用する。 ナディア領域は優先度が低いため、グレージング角に応じた優先度のファイルを作成する。優先度は0から1の値で与えられる。負のグレージング角は左舷、ゼロはナディア、正のグレージング角は右舷を示す。

-60.0 0.2
-45.0 1.0
-15.0 0.8
-14.9 0.1
14.9 0.1
15.0 0.8
45.0 1.0
60.0 0.2

ここで、ナディア領域は優先度が低く、45度が最も高く設定された。mbmosaic を実行し海底地形と修正サイドスキャンデータのモザイク図を作成する(-A4)。

mbmosaic -Idatalist_grid -E150/150/m \
-R114.2208/114.4209/-31.9001/-31.6377 \
-Wangle_priority.dat -F0.10 \
-OZMosaicSS -A4 -N -C2 -M -V

以下シェルスクリプトを実行し、グリッド化されたサイドスキャンデータ、補助ファイルであるデータ密度、標準偏差の図を作成する。

ZMosaicSS.cmd
ZMosaicSS_num.cmd
ZMosaicSS_sd.cmd


ステップ7:グリッドデータの追加マップ作成
はじめに mbm_grdplot を実行して測深のカラーシェード図を作成する。 地形を北東45度から照らし、シェード強度を0.4とする(-A0.4/45)。 データは地形(上向き正)ではなく測深(下向き正)系でグリッド化されているため、デフォルトでは高い値に相当する色が深部、低い値に相当する色が浅部に割当てられる。 これは我々が通常使用と逆である。 使用色を確定するため(上記の問題を修正するため)、データに-1をかけてスケーリングしなおす(-MSG1 オプション)。もしくはカラーパレットを逆にする(-D オプション)。 我々は後者を採用する。

グリッドが非常に小さいため、デフォルトのシェード図では粒状ノイズがあるかもしれない。 この問題を解決するために、我々は、72ドット/インチの解像度を指定する(-MGQ72 オプション)。 これによりファイル作成時間が長くなるが、出来上がりの見栄えは良くなる。 さらに、-L オプションを使用してタイトルおよびカラースケールを表示する。 コマンドは以下の通り。

mbm_grdplot -IZGridBath.grd \
-G2 -A0.4/45 -D -MGQ72 -V \
-L"Shaded Relief Bathymetry":"Depth (meters)" \
-Osb199411211212_bathshade

ZGridBathShade.cmd

次に mbm_grdplot を使用してカラーフィル海底地形図にグリッド化サイドスキャンデータを重ねる。 重ね合わせは -K オプションで実行される。 海底地形のヒストグラム平滑化なしのデータで彩色された方が良いが、サイドスキャンデータのシェーディングにはヒストグラム平滑化を行った方が良い。 これを実行するために、-S0/1 オプションを使用する。1番目の(0)はカラースケールにはヒストグラム平滑化を使用せず、2番目の(1)はサイドスキャンデータのシェーディングにヒストグラム平滑化が実行されることを意味する。 サイドスキャン高振幅が黒という慣例を維持するために、-D1/1 オプションでカラーパレットおよびシェーディングスケールを逆にする。 さらに、-A-0.4 オプションで負のシェーディングを指定することによりシェーディングを逆にする。 この場合、解像度を指定しない。その結果、粒状度の粗い画像になる。

mbm_grdplot -IZGridBath.grd \
-G3 -KZMosaicSS.grd \
-S0/1 -D1/1 -A0.4 -V \
-L"Bathymetry Overlaid With Sidescan":"Depth (meters)" \
-OZGridBathSS

ZGridBathSS.cmd



ステップ8:グリッドデータの3D透視図
mbm_grd3dplot マクロを実行してグリッド測深データの3D透視図を作成する。照明オプション (-G2) を使用してシェーディングを行う。 グリッドファイルは地形系(上方向が正)ではなく測深系(下方向が正)のため、-1 をかけてスケーリングし直す必要がある(-MGS-1 オプションで実行される)。 照明強度 0.4 および照明方位角 45度を選択した(-A0.4/45)。 さらに透視角 250度および30度の仰角を選択した(E240/30)。

mbm_grd3dplot -IZGridBath.grd \
-G2 -A0.4/45 -E250/30 -MGS-1 -V \
-OZGridBath3D

ZGridBath3D.cmd

次にグリッド化されたサイドスキャンデータを使用してシェーディングした測深データの3D透視図を作成する(-KZMosaicSS.grd オプション)。 サイドスキャンデータはヒストグラム平滑化を行うため -S0/1 オプションを使用する。 デフォルトのシェーディング強度0.2より強調するため、-A0.5 を指定する。

mbm_grd3dplot -IZGridBath.grd \
-KZMosaicSS.grd \
-G3 -A0.5 -E250/30 -D0/1 -S0/1 -MGS-1 -V \
-Osb199411211212_bathss3d

ZGridBathSS3D.cmd


SIMRAD マルチビームデータの処理
旧式の Simrad 社製マルチビームソナーの生データには "_raw.all" 拡張子がつく(EM100, EM950, EM1000, EM12, EM12D, EM121A)。 MBシステムでは、これらの古いフォーマットはフォーマット51でサポートされる。 新式の Simrad 社製マルチビームソナーでもデータは "_raw.all" 拡張子だが、MBシステムではフォーマット56でサポートされる。 MBシステムはこれら2つのフォーマットの違いを自動的に見分けることができる。mbinfo を使用することによりデータタイプの違いが簡単に分かる。

しかし、フォーマット51および56の両方とも処理に重要な情報を格納している場所が欠けている。 特に、Simrad フォーマットの生データはビームのフラグを記録しない。そのため測深データ編集を行うということはフラグ付けされたビームを無効化することでしかない。 これは推奨できない。後で実は良かったと判定されたフラグ付きビームのフラグ取消を妨害するためである。

さらに、Simrad フォーマットの生データはサイドスキャンデータを格納する。これは、それぞれのビームの反射値をサブサンプリングしたものである。 海底上でサンプリングを行う位置は不規則であり、サンプル数はピンにより大きく変化する。 この生サイドスキャンデータは位置が不規則であるため、地図作成や処理に不適当である。 MBシステムは自動的にサイドスキャンデータをまとめて平均し、(1024ピクセル×ピンごに影響されないピクセル)の規則的な格子データを作成する。 この再サンプリングされたサイドスキャンデータは、スワス描画や mbinfo 統計で表示されるものである。 生データのフォーマットには再サンプリングされたサイドスキャンデータの格納場所が無い。そのため、フォーマット51や56のサイドスキャンデータに適用された修正や処理は失われる。

そこで、Simrad マルチビームの処理済フォーマット(57)を定義した。 フォーマット57はフォーマット51または56の生データに加え、ビームフラグおよび再サンプリングされたサイドスキャンデータを格納する。 Simrad マルチビームデータは処理前にフォーマット57に移行するよう強く推奨する。 これは mbcopy で実行される。 例えば、EM1000 の生データ 0021_19960714_123418_raw.all を処理する場合、以下のようにフォーマット57へ変換する。

mbcopy -F51/57 -I 0021_19960714_123418_raw.all \
-O 0021_19960714_123418_raw.mb57

同様に、EM300 の生データ 0005_20020425_034057_raw.all を処理する場合、以下のようにフォーマット57へ変換する。

mbcopy -F56/57 -I 0005_20020425_034057_raw.all \
-O 0005_20020425_034057.mb57

Simrad マルチビームデータ処理には、さらにもう1つ注意すべき点がある。 生のサイドスキャンデータはソナーで検知された海底反射から直接導出されているため、海底反射にエラーがある場合にはサイドスキャンデータも同じくエラーである。 従って、最終プロダクトから不適当なサイドスキャンデータを削除するために、まとめられたサイドスキャンデータは、以下に示すビームフラグ処理を行う必要がある。 Simrad サイドスキャンの再処理は mbprosess の mbset オプションで設定する。 サイドスキャン計算は以下を実行する。

mbset -I 0005_20020425_034057.mb57 \
=PSSRECALCMOD:1 -V

サイドスキャン再計算を行わない場合には以下のように設定する。

mbset -I 0005_20020425_034057.mb57 \
=PSSRECALCMOD:0 -V

mbedit および mbclean は、フォーマット57のデータから "編集保存ファイル(edit save file)" を作成する場合、自動的にサイドスキャンデータを再計算するフラグを付ける。そのため、実際には手動で再計算を行うフラグを設定する必要はない。


HYDROSWEEP DS データの処理
Hydrosweep DS ソナーは、1990年代の初めから2001年まで R/Vモーリスユーイング (ラモント=ドハティー地球観測所)および R/V トマストムプソン(ワシントン大学)で運用された。 生データはテキストファイル(フォーマット21)で記録されているためデータの読み書きに時間がかかる。そこで処理前にフォーマット21からフォーマット24への変換を推奨する。 フォーマット24はバイナリであるが、21よりファイルの読み書きが15倍早い。 mbcopy を実行して変換する。

mbcopy -F21/24 -Ihs_ew9204_134.mb21 \
-Ohsih_ew9204_134.mb24

Hydrosweep DS 処理の際には、mblevitus、mbvelocitytoolあるいは他の機器で得られた、最適なSVPを使用して測深データの再計算を行うことを強く推奨する。 生の測深データは一定の音速で水深計算しており、適切なSVPを使用してレイトレース計算した水深より水深が大きくなる。 Hydrosweep DS データはサイドスキャンデータは無いが、ビーム振幅データは持っている。 振幅データはサイドスキャンデータ同様に修正可能である。 振幅データを処理するため、mbbackangle に -A1 オプションを付けて実行する。

mbbackangle -I sb199411211212.mb41 \
-A1 -P25 -N161/80 -V

この後、通常通り mbprocess を実行する。


HYDROSWEEP MD データの処理
Hydrosweep MD データの処理は、Hydrosweep DS データ処理に似ている。 特に、生データは一定音速を使用して水深を算出しているため、到達時間を使用した水深再計算が必要である。 違いは使用されるデータフォーマットだけである。 Hydrosweep MD 生データファイル(拡張子 ".R" ) は移動時間だけを記録している。 ソナーが計算した水深はパラレルファイル(拡張子 ".P")に記録される。 ".R" ファイルはフォーマット101としてサポートされる。 フォーマット102ファイルは到達時間および水深を含んでいる。 以下のコマンドでフォーマット101から102へ変換する。

mbcopy -F101/102 -Iys9409040607.R \
-Oys9409040607.mb102

このコピー中に、ソナーが計算した水深に相当する水深が計算される。データにはソナーによって使用された平均音速が記録されている。 Hydrosweep MD データはサイドスキャンデータを含んでいないが、ビーム振幅データを含んでいる。 振幅データはサイドスキャンデータと同様に修正可能である。

振幅データを処理するため、mbbackangle に -A1 オプションを付けて実行する。

mbbackangle -I sb199411211212.mb41 \
-A1 -P25 -N161/80 -V

その後、通常通り mbprocess を実行する。


SEE ALSO
mbio(l)


BUGS
It doesn't do everything we want it to yet, it doesn't work with every kind of swath data ever collected, and sometimes it breaks.

(End of File)