補助事業番号 2024M-453
補助事業名 2024年度 電力レジリエンスに資する波力発電機の開発 補助事業
補助事業者名 佐賀大学海洋エネルギー研究所 今井康貴
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1.研究の概要
これまで申請者らが研究してきた振動水柱型の浮体式波力発電装置の試作機を製作し、海洋に長期間係留する発電実験を行い、装置大型化に向けた基礎データを取得した。
2.研究の目的と背景
経産省NEDOの先行調査では海洋エネルギー発電の技術的な問題として「実海域における1年以上の長期実証試験を通じて、耐久性や電力品質の確認、運転・メンテナンスの検証を行い、技術性能・コストを明らかにするとともに、発電事業に伴うリスクへの対策の検討が必要」と指摘されている。本提案ではこれまで申請者らが研究してきた振動水柱型の浮体式波力発電装置をもとに、海洋に長期間係留することで発電実験を行い装置大型化に向けた基礎データを取得するとともに問題点の洗出しを目的とした。
3.研究内容
(1)電力レジリエンスに資する波力発電機の開発(http://i2.ioes.saga-u.ac.jp/2024M_453/)
波力発電装置機を試作し、水槽試験で動作確認を実施した。ブイは全長0.85m、全幅0.8m、全高0.6m、喫水0.35m、空中質量75.2kgであった。水槽試験と並行して佐賀県伊万里土木事務所および伊万里海上保安署に海上試験の許可を申請した。それぞれ実施許可を取得した後にブイを設置した。海上試験の実施期間は2024年10月30日から2024年11月30日、場所は佐賀県伊万里市福田5号護岸(33°20'54.6504"N、129°50'43.71"E、水深5m)である(図1)。
設置場所岸壁から波力発電ブイをクレーンで投入した。その後、発電ブイを作業船で沖に出して位置決めし,船首側にアンカー(15s唐人錨)を投入した(図2)。ブイ船尾側は岸壁リングとロープで係留した。海上保安部指導により、波力発電ブイには灯標(橙色灯:4秒1閃,光達2km)を取り付け,夜間衝突を防止した。
また、ブイ設置点の岸壁に超音波距離計を設置し、ブイ設置期間中の波高を記録した。超音波距離計は太陽電池とバッテリーで駆動させた。ブイ損失防止のため、試験期間中は数日に一度、陸上より機器を確認した。装置を1カ月間海上に係留した後、設置と逆の手順で撤去した。
計測期間中、比較的大きな波高は11/1-11/2、11/18-19、11/27-30に計測された。11/1-11/2は台風21号から変わった低気圧や前線の影響で北風が強まった。11/18-19は台風25号が台湾に上陸し、接近する台風の影響を受けた。11/27-30は低気圧前線が連続して通過し影響を受けた。

図1 試験場所

図2 (左上)試験に使用した波力発電ブイ。(右上)岸壁クレーンからのブイ吊上げ。
(左下)係留に用いた唐人錨。(右下)作業船による位置決めと投錨

図3 岸壁における有義波高および発電量
4.本研究が実社会にどう活かされるか―展望
地球温暖化にともない、近年の自然災害は激甚化し被災範囲は従来より広域化するとともに、その発生頻度が増加傾向にある。離島など物資補給地から隔絶した環境では自然災害において物資供給、避難や救援が困難となるため、再エネ機器、蓄エネ機器、エネルギーマネジメント機器など様々な技術を組み合わせた自己完結型の分散型エネルギーシステム(マイクログリッド)を形成するとともに、その強靭化が必要とされている。
この問題に資する波力発電装置の開発には、試作機の長期間にわたる実証試験が必要である。本研究はその基礎となる小型試作機の実証試験であり、今後の大型機開発に向けたデータを取得した。
5.教歴・研究歴の流れにおける今回研究の位置づけ
大学の研究成果の社会実装
6.本研究にかかわる知財・発表論文等
なし。
7.補助事業に係る成果物
(1)補助事業により作成したもの
電力レジリエンスに資する波力発電機の開発 補助事業報告書
(http://i2.ioes.saga-u.ac.jp/2024M_453/2024M_453.pdf)
(2)(1)以外で当事業において作成したもの
なし。
8.事業内容についての問い合わせ先
所属機関名: 佐賀大学海洋エネルギー研究所
(サガダイガク カイヨウエネルギーケンキュウショ)
住 所: 〒840-8502 佐賀市本庄町1番地
担 当 者: 准教授 今井康貴(イマイヤスタカ)
担当部署: 海洋エネルギー研究所(カイヨウエネルギーケンキュウショ)
E-mail: imaiy@cc.saga-u.ac.jp
URL: http://i2.ioes.saga-u.ac.jp/